ミソジノハカバ

脳内のガラクタ置き場。フィクションとノンフィクションが入り混じったカオスです。ゲームの話が多いですが、おもしろいと思ったことはなんでも書き留めます。

【作り話】ぼくの大晦日

※注意

・この物語はフィクションです。

 実在の人物や団体などとは関係ありません。

 

割と悲しいお話です。

年末年始を気持ちよく過ごしたい人は、読まないでください。おじさんのやらせなさをぶつけるために書いた話です。

そんなおじさんの複雑な気持ちを食らえ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今年の大晦日はいっつもより家の中がバタバタしてた。

毎年、じいちゃんとばあちゃんの家に行くのに飛行機に乗れるのがとても楽しみで、ぼくはワクワクした気持ちでいっぱいだった。

飛行機はいつだってかっこいいし、もらえるおもちゃも楽しみだ。

お父さんとお母さんはいつもよりたくさんの荷物をカバンにぎゅうぎゅうつめている。

ひょっとしたらいつもよりじいちゃん家にたくさんお泊りができるのかもしれない。だから準備がいつもより大変なんだ。

そう思うとぼくは嬉しくなって、部屋を駆け回りたい気持ちになった。

だからお気に入りのおもちゃを詰めたリュックを持って部屋を走った。

 

ぼくはじいちゃん家の裏山に行くのが好きだった。

猪、鹿をじいちゃんがとるんだ。ばあちゃんは嫌な顔をしていたけど、じいちゃんが鉄砲を構えている姿はとてもかっこいいんだ。

楽しみだなー!と走っていると、お父さんに怒られちゃった。

いつもお父さんは怒る時も優しい顔をしているのに、その時のお父さんは、じいちゃんの鉄砲を触ろうとしたぼくを怒った時の顔に似てた。

ウチはマンションだから下の人に迷惑がかかるって怒られたのに、またやっちゃったからかな。

ぼくは少し怖くなったけど、すぐにお母さんがきて、ぼくをギュッとしてくれた。そんなに強く捕まえなくてももう走らないのに。お母さんは少し震えていた。部屋が寒いからかな。

 

外で花火みたいな音がする。

みんなお祝いをしているのかな。

ぼくはそれを聞いて、夏のお祭りで食べた焼き鳥を思い出して、怒られた悲しい気持ちが少しひっこんだ。また行きたいな。夏がいまから楽しみだ。

 

車に乗ると、道路は車だらけ。

じいちゃん家に行く時はいっつも渋滞だ。

父さんは「帰省ラッシュだよ」ってよく笑いながら文句を言っていたけど、今日は一言も話さない。顔も怖いままだ。

まだ怒っているのかな。そういえばちゃんとごめんなさいをしてないな。だからかもしれない。ぼくは心配になった。

母さんは「大丈夫だからね」となんどもおんなじことを言う。なにが大丈夫なんだろう。飛行機の時間に遅れそうなのかな。きっと心配しているんだろう。でもきっと大丈夫だと思う。飛行機はいつも待ってくれているから。

 

「お父さん、お母さん、大丈夫だよ」

 

とぼくが言うと、お父さんとお母さんが驚いた顔をしてた。

そのあと、お父さんは口をへの字にして震えていた。お母さんはニコっと笑ったけど、なんでだろう。泣いていた。

 

ドーンという花火の音がして、空き缶を落っことした時よりすごいガラガラという音がした。

びっくりして外を見ると、僕の通う学校の方が赤く光っていた。夕焼けみたいでとっても綺麗だった。

 

「車から降りて逃げよう」

 

お父さんは言った。

何から逃げるんだろう。じいちゃん家はもっと遠くで、歩いてなんて行けないのにな。

お母さんは僕を抱っこして道路にでた。

道路は車が走っていて危ないし、置きっ放しの車はどうするんだろう。

ぼくはとても心配になった。

それから少し、悲しい気持ちになった。

 

「ぼく、自分で歩けるよ。でもじいちゃん家に歩いてなんて行けないよ。じいちゃん待ってるよ」

 

お母さんに言うと、お母さんはまた「大丈夫だからね」と言って、ぎゅっとぼくを抱っこした。

みんな道路で歩いたり、走ったりして、大きな声を出していた。

外は寒かったけど、お母さんはあったかくて、ぼくはそのうち眠ってしまった。

 

 

起きると知らないおじさんに抱っこされていた。

知らないおじさんはじいちゃんが持ってる鉄砲みたいなものを持っていて、危ないなぁと思った。

 

「お父さんと、お母さんはどこ?」っておじさんに聞くと、「あとで待ち合わせするんだよ」って言った。

ぼくは「知らないおじさんについていけないよ」ってお話をすると、おじさんはにっこり笑って「何も心配いらないよ」って言った。

 

よくみたらおじさんは傷まみれで、血が出ていた。

ぼくはびっくりして、すぐにバンソーコーをはってあげないとって思った。

ぼくはよく転ぶからリュックにバンソーコーを入れてるんだ。それをおじさんにあげようと思った。

 

そしたらまた花火の音がした。

それからビューンとすごい風が吹いてきた。

 

風が吹いてきた。

 

風はまだ、吹き止まない。

 

 

 

 

胸糞悪い話を書いてしまった。

でもこの情勢になってから、私の中で鬱屈とした思いがどっかに残り続けている。別に、反戦を啓発するとか善意だとかそういうのじゃなくて、もしそこに自分がいたらどんな思いをするだろうかってすぐ想像してしまう。悪い癖なのだ。

こういうとこで発散しないと気が滅入る。

 

こんな子供がいないことを祈っている。そしてこれからも出ないことを祈っている。

来年は世界が平和であることを祈って〆とします。

今年の記事はこれで終わり。

 

それではみなさまよいお年を。