ミソジノハカバ

脳内のガラクタ置き場。フィクションとノンフィクションが入り混じったカオスです。ゲームの話が多いですが、おもしろいと思ったことはなんでも書き留めます。

【日記】ボールペンの妖精

私は興味のないものにはとことん関心がない。

大事なものはどこに置くか決めているのだが、それ以外はその辺に放り投げておく悪癖がある。

私の部屋はカオスだ。

しかし私にとっては必要なものは必要な場所に放ってある。

無秩序に見えるが、それは私ルールの中では計算し尽くされた合理的な配置なのだ。

我が家の一角にある九龍城砦だ。なぜか本棚だけは綺麗という不気味さ。

妻にはいつも怒られていたが、最近は呆れられて怒られなくなった。

それはそれで怖い。

イメージ図。実際の九龍ではない。

会社では整理整頓をとにかくうるさく叱られているので、その度にうるせえなぁと思いながら片付けるふりをしては、引き出しに押し込んで、目に見えるデスク上だけには物を置かないようにしている。

その代償に引き出しの中はもう私の手に負えないレベル。

無秩序で、マッドマックスである。

これは小学生のころから変わらない。

トゲトゲの肩パッドでも付けて出勤しようかな。

無事会社にたどり着けないだろうなぁ。

その中でも、ボールペンなんかは心底どうでもいいものなので、そのへんにあるボールペンで走り書きしてはポケットにしまいこみ、それをデスクに溜め込んでは一斉に元の場所に放流する儀式を週に一度行う羽目になる。

ちなみに会社の備品だからね!?

さすがに人様の所有物には手出さないよ!みくびるなよ諸君!ボールペンもしまえない男が何を偉そうにとは言わないで欲しい。反論の余地がない。

正論は時に人を傷つけるナイフになることを自覚したほうがよい。

 

几帳面な部下からよく叱られるので、ごめんねーなんていいながら所定の位置に戻すのだが、私の中では心底どうでもいいことなので脳みそにかけらも残らない。

 

いつのまにか私の部署周りはペンに◯◯用と、テプラでボールペンの住所が記載されるようになった。

こしゃくな。絶対私以外にもいるだろ。犯人。

無機質なテプラの文字に、部下の静かな怒りと凄みを感じる。

怒られるのやだなー。

 

そんな時、親友とも呼べる先輩の家のことを思い出した。その先輩の家に行くと、いつもギターのピックが足の裏に張り付くのだ。

なぜか尋ねると真相はこうらしい。

 

彼はギター弾きなのだが、私とよく似ていて、ピックをそのへんに放っては無くして、一円玉でギターを引くような男であった。硬貨が削れるから真似しちゃダメだぞ。

ギターを弾いたことがある人ならわかると思うが、硬貨で弾いた音はジャリジャリしたあたりになって柔らかい音にはならない。

それが気に入らないと、先輩はピックを探すのだが、弾きたい時に見つからないのがストレスらしい。

そこでピック入れを購入するのだが、結局、収める前にピックは消息を断つわけで、いつしかそのピック入れもどこかにいってしまったらしい。本末転倒もいいところである。

ピックの妖精が持っていったとヘラヘラ笑っていた。そんな妖精いねぇよ。

探すのも面倒くさい。でも片付けられない。

そこで思いついた解決法が、部屋中にピックをばら撒くという奇行だったらしい。

安いピックを大量に買い込み、部屋に豆まきみたいにばら撒いていたそうだ。そら足の裏にもつくわな。

その話を聞いてから、私も面白がって、たまにピック買っていっては豆まきのようにばら撒いて差し入れていた。

先輩はおーサンキューとかいいながらピックの上で寝てた。傑物と言わざるを得ない。

こいつ馬鹿だなーと思っていた。

そんな思い出に天啓を得た。

職場でもボールペンばら撒きゃいいじゃないか!

そうすれば誰も、私も困りはしない!

減ったら困るし、嫌だろうが、増えたら喜ぶだろ。

そんな安直な考えを、イタズラもかねてすぐに実行した。

流石に会社の金でやるのは倫理的によくない。

ボールペンを30本ほどお小遣いで買い込んで、部署周りのペン立てにばら撒くことにした。

ただやるんじゃつまらないのでマジックでちょんと小さな印をつけておく。

こいつらがどう流動していくのかみるのも面白い。

 

この奇行はいまでも続けていて、思い出した時にテプラボールペンを元の住所にもどしつつ、同居人として新しいボールペンもしれっと紛れ込ませていっている。

 

結果、部署に用途不明の違法滞在ボールペンが大量に発生するもんだから、事務用品購入に無駄があるのではと会議が紛糾していた。

 

や、やべぇ。俺、しーらね。

その場は知らん顔しながらうんうん気をつけようねと頷いて切り抜けた。

「私の金だよ!アッハッハ!」とは言えないだろ。

 

ちなみに今日部署の会議があったのだが、半分くらいの人間が私が印をつけたボールペンを使っていた。

 

おめーら!

おめーらも私と同類じゃないか!

 

と思いながらふと私のボールペンを見ると、テプラで◯◯用とデカデカと住所が貼ってあるのである。

素知らぬ顔でデスクに戻し、別のボールペンを出すと、また◯◯用と住所が……

何も黄色のテプラにすることないだろ。主張が目に痛いんだよ!

 

うーん。なんともままならん。

いや、ふつうに元に戻せばいいんだけど、仕事に集中してると忘れんだよな……

そう思いながらコソコソボールペンを増やしたり、減らしたりし続けるおじさん。

 

SDGsに逆行してるな。

諸君らは真似しないように。

 

私はボールペンの妖精だからさ……大目に見てほしい。

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