ミソジノハカバ

脳内のガラクタ置き場。フィクションとノンフィクションが入り混じったカオスです。ゲームの話が多いですが、おもしろいと思ったことはなんでも書き留めます。

XBOX360のイカれたメンバーたち~僕らの姫プレイ撲滅戦争~

 電脳遊戯にはエンジョイ勢とガチ勢という概念が存在する。

 この概念の間には反り立つ壁のようなものが存在し、数々の紛争の火種となってきた。

 

 当時生意気な大学生である私は、自分のスタイルを微塵も曲げることなく、嫌なものは嫌だとはっきり相手に伝えていた。私はエンジョイ勢だから、ガチ勢のルールに歩み寄るつもりがないし、楽しくないと思ったらすぐにこの場から抜ける。風紀をみだすようであったらその場から離れるので、遠慮なくすぐに言ってほしいと公言していた。

 

 この対応が功を奏したのか、割と私にはガチ勢、エンジョイ勢どちらの友人もいたものだ。足を引っ張るほど下手ではなく、かといってヒーローになるほどうまくはない絶妙なプレイヤースキルもその一助となったと思う。

 

 XBOX360をプレイする人間はガチ勢が多い。あえてオンライン無料のPS3を買わず、XBOX360を買うようなプレイヤーなのだから、(XBOX360はオンライン有料であり、そのぶんオンライン環境は安定していた)それは当たり前のことだと思うのだが、だからこそ変わり者が多かった。

 

 僕が友人になった数少ないプレイヤーにasagiri君(仮名の仮名)となめこ君(仮名の仮名)というプレイヤーがいた。

 僕はこの二人がいい感じにトンでいて好きだった。僕たちをつないだのはFPSという殺伐としたジャンルであり、何で知り合ったかはもう忘れてしまったが、二人ともいい友人であったといえる。

 

 asagiri君は普通に会話するとただの穏やかでオタク気質な気のいい青年であったのだが、一つの電脳遊戯を自分の美学でとにかく突き詰めるタイプであり、その美学に反するものはなんであれ許さないという排他的な性格をしていた。

 彼はとあるゲームでは、某掲示板の晒しスレの常連であり、テンプレートに彼の名前が準備されているほどのプレイヤーであった。

 

 なめこ君は面倒見がよく、仲間に対しての情が厚いのだが、何分短気がすぎており、外国人にプレイヤーネームを呼ばれるだけで喧嘩売ってんのかてめぇとかみつく狂犬気質の男だった。名前を呼んだだけのに、日本語でキレらかし、外国人プレイヤーにsorryといわせるのだから、その気迫たるや相当なものであり、彼は戦国時代に生まれればいい武将になっていたと思う。

 

 彼らに共通していえるのは、根は決して悪いやつではないが

 導火線が3ミリしかないダイナマイトのような男たち

 というところであった。

 

 どういうわけかしらないが、私は彼らに気に入られており、どんなトロールをしようが、misonchoだからと笑って許してもらっていたものである。

 

 そんな平和なXBOX360フレンドに不穏な風が吹き始める。

 それは僕の大学の先輩M氏が、XBOX360を購入したところから始まっている。

 M氏は面倒見のいい先輩であったが、先輩風を吹かせまくるという風タイプ魔法の賢者クラスの人間であり、僕から見ても横柄だなと思うことが多々あった。

 僕は耐風魔法のスキルをもっていたため、そこから除外をされていたという背景があり、M氏と良好な関係を築けていた。

 

 ある日M氏が

「misonchoは箱(XBOX360)ユーザーなんだよね?一緒にプレイしない?」

ともちかけてきた。僕は心底嫌だったので、

「嫌です」

と答えたのだが、逆にそれがネタだと思ったようで、会うたびにフレンド登録をせがまれるようになってしまった。それが何か月か続き、とうとう根負けしてOKをしてしまったのである。

 

 それからは毎日のようにM氏からゲームの招待が届くようになった。M氏はM氏でちょっとトンでいる人であったので、それをはたから見ているのはとても面白く、僕の意に反して楽しくゲームが行えていた。

 M氏はコミュ力の塊であり、すこしでもうまい、面白いと思ったプレイヤーをボイスチャットに誘い、フレンドを増やしていく天才であった。僕はコミュ症気味であったので、そこから広がっていくフレンドの枠に正直感謝している部分もあった。

 

 同ゲームで遊ぶときはasagiri君、なめこ君とも遊ぶようになり、僕たちはうまくやっていけるとそう確信していた時期もあった。

 

 しかしながらM氏が風魔法賢者であることを私はこの時点で忘れてしまっていたのである。

 コミュニティが大きくなるにつれ、M氏はasagiri君、なめこ君に先輩風を吹かせるようになり始めた。asagiri君もなめこ君も仲間には情が厚いため、なんとか我慢をしているようであったが、そこを完璧に決壊させる事態が発生する。

 

 女である。

 

 このころアイちゃんという女プレイヤーが僕らのコミュニティに入ってきていた。

 アイちゃんは女を武器にするプレイヤーであり、その態度が僕らの鼻についたものである。

 M氏は女の子にめっぽう弱い。はたからみても気持ちが悪いくらい、女の子に対して忖度するのである。

 女の子にいいところを見せるためなら、男の友達などいなくなって構わないというバカ野郎であった。

 

 私、asagiri君、なめこ君もその煽りをくらい、M氏、アイちゃんの過剰とも思えるいじり、接待プレイをよぎなくされ、フラストレーションがたまっていった。

 そんな中でも彼らは我慢をしてくれた。僕にはそれが我慢ならなかった。

 彼らは切れたナイフである。その良さをこんなくだらない娯楽で失ってはならない。

 

 僕はM氏がいない場を見計らって二人に

 

 「もうやっちゃおう」

 

 ともちかけた。

 

 二人とも即答で「うん」と答えた。

 

 おそらく満面の笑みだったに違いない。

 

 電脳遊戯でうけた恨みは電脳遊戯で晴らさなくてはならない。

 これが僕たちの流儀である。

 

 僕はM氏にこう持ち掛けた。

 「親善試合やりましょう。僕たちチームとM氏、アイちゃんチーム。そちらは武器などなに使ってもいいですよ。僕たちはハンドガン、ノーパークで縛りますから!アイちゃんを守るみたいなプレイもなかなか乙なもんじゃないすか?」

 

と。M氏はまんまと誘いにのり、スケジュールが組まれた。

 

決戦の舞台はコールオブデューティモダンウォーフェア2である。

 

 

僕たちはその日までに徹底的に戦略を練った。

ハンドガンエイムを鍛え上げ、M氏の対策と傾向を練った。時には衝突することもあったが、僕たちは共通の敵で繋がった兵士。どんどんとお互いに切磋琢磨していった。

 

 作戦はこうだ。

 

 エイムがうまいasagiri君は中距離でM氏のけん制。M氏はプライドの塊なので、スナイパーライフルで勝負をかけてくるのは目に見えていた。エイムは大したことないので、asagiri君がロング(見通しのいい道)で彼を引き付ける。M氏はイノシシなので、必ず前に出てくる。(彼はストリートファイターダルシムを使っていても接近戦を挑んでくるアホである)

 そこをなめこ君がサイドから狩る。

 そして瞬間エイムが得意で裏取りが得意な私が、後ろから姫をひたすらに倒し続けるというものだった。

 

 リスポーン地点も計算し、リスポーンが裏返ることのないよう調整する。

 完璧な作戦。

 

 僕たちはあの瞬間確かに特殊部隊(囲いカス撲滅用)だった。

 

 決戦の日、いつものように囲いムーブが始まる。

 M氏は自分の見せ場を作るために鼻息を荒くしていた。

 

 オペレーション開始。うるさそうなボイチャはミュートをして、とにかく僕たちはマシーンになった。

 

 結果はここに記載をするまでもないと思う。

 

 姫は沈黙、ナイトは憤慨していた。

 

 「お前ら大人げないぞ。アイちゃん初心者なんだから優しくしてやれよ」 

 と息巻くM氏。

 

「ち〇こついてねぇのがそんなに偉いんすか?」

 の捨て台詞とともになめこ君がオフラインに。

 これは彼の中ではかなり我慢してくれていたと思う。M氏がリアフレ先輩という私に配慮してくれたのだろう。

 asagiri君はM氏、アイちゃんのプレイのなにがダメだったのかを適切に解説し、改善点を上げオフラインに。

 

私は爆笑しながらオフラインになった。

 

 次の日、私はM先輩から話しかけられた際に、彼が何かを言う前に

 

「いやぁー昨日は楽しかった。いい試合でしたね!またアイちゃん誘ってやりましょう!」

 

 と握手を求めるとM氏も

 

「お、おう!ありがとうな」

 

と握手をしてきた。

 

こいつちょろいなぁ

 

と思った。

 

M氏はそれでも懲りずに女を囲い、格闘ゲームで私に接待を要求してくるのですが、それはまた別の日にお話ししようと思う。

 

 

男と女は不思議さ。