男というのは意地を張る生き物だ。
社会にでると、その意地を少しずつ折りながら生活していくことになる。
でも内にある闘争本能と熱い心はどこかで燻り続けているものだ。
だから、映画「ファイトクラブ」は今なお名作として語り継がれる。
私は格闘漫画が大好きだ。
最近のイチオシを紹介させて欲しい。
打ち切られると困るのだ!木端の分際で何様かって話だが、私の人生の楽しみが減るのはとても困るのだ。せっかくブログを書いているのだから布教させていただく。掲載順がヤバイ!
名作、「大好王―ダイスキング―」も打ち切られてしまったしな!(大昔の話)
なくなってしまってからでは遅い。
というわけでご紹介するのは「アスミカケル」である。
作者は「火ノ丸相撲」を描いた「川田」先生だ。
あの作品も、体格に恵まれなかった小兵である主人公が、意地と信念だけで変化技を使わずに体を痛めながらも自分よりでかい相手に真っ向からぶつかっていく激アツな漫画だった。ぜひこちらも読んでみて欲しい。
前回のテーマは「相撲」だったが、今回は「MMA」。主人公「明日見二兎」はボケてしまった祖父に付き合う形で格闘技の稽古を続けてきている。その稽古で関節技に異様に特化した高校生になってしまったのである。
男は戦るとなったら躊躇うな。殺れ。
明日見は優しい性格で、争いを好まない。積極的に力を誇示したりはしないし、自らの痛みを伴ってでも他者の争いを止める心優しさをもっている。
しかし、自分の「大切なもの」に踏み入られた瞬間、狂気じみた信念で相手を潰しに行く。その時の容赦のなさというか覚悟みたいなものが紙面から伝わってくる迫力がすごくて私は大好き。作者が描く戦う男の表情を見てると、こちらも自然と顔が険しくなる。
またすごくいいのが、別に怒りを発散させるために相手を倒すわけじゃないということ。
自分の譲れないラインを超えた相手に、主人公は護身のために戦う。
でも単に逃げるわけじゃなく、報復合戦にならぬよう、徹底的に相手を折るのだ。
それは強い言葉を吐きかけたり、ぶん殴ったりするわけじゃなく、徹底的な痛みで2度と向かってこなくさせる。恐らくその瞬間、主人公は後のことは考えず、全てを賭けて相手に全力で対峙している。表情も必死そのものだ。
その瞬間に、心が熱くなる。「俺だっていざとなれば噛むんだ!」という強い気持ちがメラメラ燃えてくる。
内に潜む狂気と闘志の発露。作者の川田先生はこういうのを表現するのがむっちゃくちゃうまい。ピリつく空気。このあとどうなったっていいという背水の陣のような心意気がキャラクターからありありと伝わってくる。これが本作、また作者の魅力。
本作を象徴するセリフを引用させていただく。
武とは戈を止めると書く
無闇に振るってはならんー・・・が
戦るとなったら躊躇うな
その為の備えをしてきた
殺れ
臆病でもいい・・・逃げてもいい
だが・・・
逃げて失うものが重ければ
戦え
得難きものは危険を冒したその先にある
折れ
心を折れ
引用元:アスミカケル1巻より
著者:川田
たまんねぇだろ?
王道の安心感
この漫画、本当に王道をいく格闘漫画だ。一巻だけでも伝わる王道の文脈。先の展開はなんとなく予想がつく。でもある種それを裏切らないで進んでくれるという安心感もある。
「はじめの一歩」、「弱虫ペダル」、「アイシールド21」のように、天才的な素養を持つ素人が、着実に登っていく様がみれるだろうという期待感がある。
王道はおもしろいから王道なのだ。だからこそ難しい。
変則的な漫画が増える中、こういう王道から逃げずに真っ向から向き合うというのに好感が持てるし、何よりうれしい。
関節技特化というスパイス
こういうのは「メジャー」などにもあるように、速球が投げられる。「はじめの一歩」のように強靭な足腰からのパンチが強い……などというキャラが多い中、この漫画はあえて誌面映えしない関節技をフォーカスしている。
主人公は打撃センスは0である。
これがまたよき!!
決めゴマを作りづらい組み合いを武器にマンガを描くのは大変だろう。視覚的な凄さが伝わりづらいテーマだ。
しかし、その設定が主人公の穏やかさと、内なる狂気を演出するのに一役かっている。
打撃と違い、関節技は痛さの性質が違う。バゴーンと痛烈に悪を滅するわけじゃないのだ。あがきながら、いざとなれば相手を折る覚悟。その必死に立ち向かう姿勢。本当にいい塩梅でキャラクターを作っている。
怖い!続いてくれよ!?頼むよ!?
きっとこの作者であれば、魅力的なキャラクターをどんどん出してくれると確信している。
打撃特化、変則ファイター、海外選手。どんどんと広げられるし、熱を持ったバトルを届けてくれるのは火ノ丸相撲をみても明らか!絶対におもろいはずだ!
でも……華がない!(小声)
こういうのを買い支えてくれる層は女性ファンなんかも大切だったりするのだが、絵柄的に跳ねなそう。
漫画も商業なので、売れなくちゃならないだろう。
そこで変な破綻を起こすことは、この作者に限って絶対にないと言い切れるが、それが逆に怖い。
だからこのブログを見て興味を持った人はぜひ手に取ってみて欲しい!
本当におもしろいから!!