当時の私は高校生。
壊滅的にモテなかった。
とにかく女子に免疫がなく、友達とは話せても、女子が少し混ざるだけで挙動不審になっていたのである。
無駄に高いプライド、メルティブラッドアクトカデンツァ(七夜志貴)、
.hack//Roots (ハセヲ)などで培ってしまった重度の厨2病という重い病に苦しみ、見つめあうまでもなく、素直におしゃべりできない状態であった。
誰だ? いま俺のこと「死の恐怖」っていった奴。
いっていいことと悪いことがあるとは思わないのか。
人の心がないのかと問いたい。
※参考文献にどうぞ。
うーん……。
今でもかっこいいんだよなぁ(アラフォーおじさん)
とまぁ不治の病に侵されている私だが、高校時代より様々なゲームをプレイしてきたが、かたくなにエロゲー、ギャルゲーだけはやらないと謎の操を立てていた。
俺はオタクだけど、「そういうんじゃないんだぜ。いやむしろ俺はゲームが好きなだけであって別にオタクじゃないのさ」
というオタク特有のオタク選民思想で自分はセーフだと思い込んでいた。こういうオタクこそ真にアウトなのに。当時気が付かなかったのだ。そりゃもてるわけがない。
当時は推し活なんて言葉はなく、オタクは秘めるものというのが普通だった。
そんな中、店頭(当時amazonなんかない)でギャルゲーやエロゲーを買うやつをどうかしていると思っていた。
しかし思春期でたまっていくリビドー。女の子と遊びたい。俺だってドラマのような恋がしてみたい!
気が付けば私はレジ横のワゴンにあった美少女ゲームをレジにもっていって会計をすませていた。
始めた購入した恋愛シミュレーションゲーム。
味気のない茶色のビニル袋に入れられたそれは、自転車のカゴに放り込まれ、段差で揺れるたびにカタカタと音を立てて跳ねていた。
それはパッケージに描かれた女の子が私を催促しているような錯覚を覚えた。
高鳴る胸。自室でディスクドライブが開きづらくなったPS2にディスクをセットした感覚は今でも忘れもしない。
その思い出のゲームこそ
である。
真実の愛の物語3だぞ?
3つも真実の愛を生み出しているということだろう。間違いがない。
いいんだよ。ファイナルファンタジーだっていくつでてるのかという話ではないか。
パッケージの裏には「抱えきれない想い・・・。伝えたい。」
そうなんだよそうなんだよ。伝えたいんだよこの思いを。
わかっているじゃあないか。
私は恋愛シミュレーションゲームはこれ以外やったことがないため、どういうものが普通かはわかりかねるが、大まかなながれはこうだ。
学校に通う。女の子がいる場所が表示される。
そこに向かい話をする。
というのを×n回繰り返していく。
最初は新鮮に楽しんでいたのだが、すぐに作業と化し、会話BOT化する。この話前もしてなかったっけ? とか思いながら会話を繰り返す。
このゲームなんと1年間という時間が用意されている。ペルソナ3でも1年は莫大な時間に感じるのにこの冗長になりつつある時間をどう消費するのか。
このゲームもちろん戦闘も技術介入ポイントもない。逃げ場などない。
そして最大の問題はゲームの舞台は中学校。
そう夏休みがあるのだ。
これ、どうするんだろとぼんやりプレイしていたのを覚えている。
なんてことはない。
ヒロインは毎日決まった時間に犬の散歩に公園にでてくる。
そこに張り込み、偶然を装い会話し、街にでかけるように誘えばいいのだ。
それを夏休み終了までひたすら繰り返す。縮まっていく2人の距離・・・。
これって恋愛じゃなくてストーカーなんじゃ・・・。
リアルでやったら逮捕だよなぁ。なんて思っているころにはもう卒業の時期。
彼女の好感度もマックス。彼女ももういつ告白されてもおかしくないくらいのテンションで話してくる。なんなら催促してるまであるセリフもあった。
これで告白が失敗したら嘘だ。
そんな状況で告白すると
「受験に集中したい」と至極まっとうな理由でフラれた。
そんなに受験に集中したいなら毎日朝犬の散歩なんかしてる場合じゃないだろう。
と当時の私は真顔でコントローラーを握りしめていた。
なんだこのゲーム。なにも残らない。本当に凸凹なく、ただスルリとどうということのない中学生活は終わりを迎えた。
エンディング前にヒロインが嫌いになるとはすばらしい恋愛ゲームである。
これほかのヒロインもこんな感じなんだろうか・・・。このゲーム、畑のカラスよけにするくらいしかないのだろうかなんて考えていると、卒業式後にヒロインに呼び出される。
いまさらなんだというのか、なかば呆れながら指定場所に向かうと、
「受験に受かったから付き合う」
というあまりにも合理に振りすぎた告白を受ける。
「えっ?こいつサイコか?」と思っていると、なぜか「おめでとうー!」とクラスメイト達が大挙して現れ、我々を祝福するのである。
外堀から埋められている!退路を断たれた!
そして流れ出すエンドロール。
本当に呆然とした。
そして同時にこのゲームが意味するメッセージに気が付いたとき、私はハッとしたのである。
恋愛とは。真の恋愛とは。
いや、受験とは!
受験は真の恋愛よりも大切である!
お前ら!東大へ行け!と渋い声が聞こえてきそうなメッセージ。私は確かに受け取った。
その後、私は一般受験にて志望校への入学を果たす。
ありがとう。トゥルーラブストーリー3。
このゲームのおかげで私は浪人せずに済んだ。
受験生の皆さま。
受験生のお子さんをもつ親御さん。
ぜひ一家にひとつ。真実の愛はいかがでしょうか。