ミソジノハカバ

脳内のガラクタ置き場。フィクションとノンフィクションが入り混じったカオスです。ゲームの話が多いですが、おもしろいと思ったことはなんでも書き留めます。

ポケットモンスターと私。~激闘赤緑購入編~

 ポケットモンスターを初めて見たときは全く面白そうに見えなかった。

 TVCMがまったくパッとしなかったのである。その当時の私はロックマンばかりプレイしていた記憶がある。いわゆるロールプレイングゲームの類をまったく触っていなかったことにも起因するのかもしれない。俺はポケットモンスター微塵も興味がなかった。

 そんな中、親友であるショウヘイがポケットモンスター赤を購入したと私に見せてくれた。そこには小さなカメがボケボケのドットで表現されており、それはそれはたまらなく可愛かった。小さな画面の中には見たことないポケットモンスターという動物と人間が暮らす、どことなく優しくてワクワクする世界がそこにあった。

 俺はショウヘイにお願いして小さなゲームボーイの画面を二人で食い入るように見つめた。

 「もうすぐ進化するみたい。コロコロで読んだんだ」

 ショウヘイはそういうと一心不乱に草むらをかき分け、ポッポ、コラッタを何匹も倒し始めた。進化とは一体何だというのか。同じ鳥とネズミを倒して何が面白いというのだろうか。そう思っていた瞬間である。

 

『……おや!?ゼニゼニのようすが!?』

 

まばゆい光に包まれ、ショウヘイのゼニガメは愛らしかった姿を変貌させ、凛々しい目元のかっこいいカメに変貌したではないか。

ショウヘイはカメールという名前になったポケモンにゼニゼニという可愛すぎるニックネームをつけたことを後悔しているようだったが、そんなことはどうでもいい。その壊滅的なセンスのなさを一人で悔いていろ。

そのゲーム画面に、俺はくぎ付けになり、頭を分厚いゲームボーイの角でぶん殴られたような衝撃を受けた。

幼い俺はすぐに確信した。これは神ゲーだと。約束された勝利であると。

 

 俺はすぐに親にポケットモンスターをねだった。ねだりにねだりまくった。しかしながら我が家はそこまで裕福な家庭でもないうえ、電脳遊戯に懐疑的な両親を落とすのは至難の業。クリスマスまで待ちなさいという言葉に何か月先の話をしているのか?馬鹿なのか?と素直に思ったものである。

 これではらちが明かない。ショウヘイはこの間にも愛しの亀と旅情を楽しんでいるというのに、こんなに不公平なことがあっていいのだろうか。

 どうしたらいいのか。普段使わない頭を急速回転させる。

 ここに書くのもはばかられるような方法ばかりが思いつく。石を使ったり、ポケットに……。本当に実行していたらこんなのんきに記事なんて書けていない。

 

 このままではポケットモンスターは当分手に入らない。しかしどうしても欲しい。

 そうだ。親でダメなら他の大人を頼ればいいじゃないか。

 親戚を絨毯爆撃していけば、ポケモンの1本や2本。容易に手に入るはずだ。

 そうと決まれば話は早い。当時の家電には電話帳機能などの便利機能はなく、我が家は電話の横に手書きで追記をするタイプの電話帳が吊り下げられていた。情報はそこに詰まっているので、作戦の実行は容易だった。その中で少しでも覚えのある名前と番号を親にばれないようにメモをとった。なんとなくこの行為があまりいい行為でないことはわかっていたが、もうこれしか手はない。ポケモンか死かという脳内であった。

 

 そしてばれない様に、親の目を盗んで、一軒一軒電話をしていったのである。

 

 ポケモンというゲームがどうしても欲しいこと。

 友達はすでに冒険にでていること。

 これさえあれば勉強でもなんでも頑張れる。

 齢1X才で一生のお願いを行使すること。

 

 手ごたえはあった。じいちゃんは「おおそうかそうか」「おうおう」とでかい声で俺の話をきき、ばあちゃんは「あんたばあちゃんが黙ってそんなん買ったらお母さんに怒られるしょ」など押せばこれ何とかなるんじゃねぇかな?という態度に俺はギレン・ザビよろしくポケモンの必要性を説いた。

 おばさんには大声で笑われ、「おもしろいから買っちゃるわ」とお言葉をいただいた。

 この調子で順調にかけていけば……と思っていたが、目論見は外れることとなる。

 

 おばさんが親にチンコロしたのである。

 

 おふくろは烈火のごとく怒り狂い、なんてみっともないことをするんだと俺を叱責した。今の僕ならあの時のおふくろの気持ちがわかるかもしれないが、当時の俺は賢いチンパンジーレベルの知能しかないのだから、何に怒られているのか全くわからなかった。むしろポケモンを買わないあなたたちが悪いとすら思っていた。

 

 俺は絶望の淵に沈み、泣き晴らした。おそらく人生ですごい泣いたランキングトップ10には入るくらいに泣いたものである。夕方から夜まで飯も食わずに泣いた。

 するとおやじがすっと部屋に入ってきて、俺の頭に手をのせた。

 「○○……そんなにポケモンほしいのか?」

 あっ!この流れ!激アツなやつ!俺は瞬時に振り返り、とれるんじゃないかくらい首を縦に振った。

 親父はフフフと笑い

 「働け」

 と一言いうと、うんうんとうなずきながら自室に戻っていった。

 そう。親父は酔っぱらっていたのである。

 

 

 その後、ポケモンはじいちゃんばあちゃんがあっさり買って送ってくれた。

「おう。送っちゃったからよ!ばあちゃん買ってきてくれたからよぉ。大事にしてぇ、母さんのいうことちゃぁんと聞けよぉ」

 絶叫しながらじいちゃんにお礼をしたのを覚えている。

 

 これが俺のカントー上陸秘話である。

 ポケモンは様々な思い出を残してくれているため、またちょこちょこと書き足していこうと思う。

 

 

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