ミソジノハカバ

脳内のガラクタ置き場。フィクションとノンフィクションが入り混じったカオスです。ゲームの話が多いですが、おもしろいと思ったことはなんでも書き留めます。

XBOX360~狂気のハード、狂人の集い。ロスルE編~

 今から少し前、ゲーム機ハード大戦争が起こった。

 日本の最高峰。SONYPS3。そして黒船Microsoftから満を持して登場したXBOX360の争いはなかなかに熾烈だった。

 某掲示板は荒れに荒れ、いつも互いに石を投げ合っていた。訳の分からない蔑称をつけあって、まるで一年戦争のような装いであったといえる。

 両方買えばいいのに。なんて野暮なことを言おうものなら、アクシズ扱いされてしまう。そんな苛烈さであった。

 

 私はメタルギアソリッド信者であったため、発売日に迷いなくPS3を購入したのだが、MGS終了後、あまりにやりたいゲームがなく、途方にくれていた。

 そろそろゲームも卒業か。とぼんやり思っていた時期もあったくらいだ。

 

 そんな中、私の大学の親友は一人XBOX360を購入し、「Forza Motorsport」とロスルEこと「TESTDRIVE」をひたすらにプレイしていた。周りがPS33DSの話をするなか、彼はいつもXBOX360の話をいとおしそうにするのだ。

 カナダ人に車をぶつけてしまい、オープンチャットで1時間ほど罵倒された話や、休日を使い、TEST DRIVEでハワイのオアフ島を4時間(リアル時間)をかけて一周した話を喜々として語っていて、私は「こいつ、少し独特な感性(頭がイカれているん)だなぁ」と思いながらも、私のゲームプレイでは起こりえない非日常な現象に心惹かれていた。

 

 ちなみに友人は実車運転は馬鹿みたいにへたくそである。ゲームと現実を混同してはいけない。

 

 どのくらい下手かというと、サークル合宿ドライブでABSを発動させるという偉業を達成させているほど下手だ。今でも友人の青い顔、女子たちの悲鳴を忘れない。

 

 大学おなじみのゼミ合宿。私と親友は陰キャまるだしのムーブを見事に決め、飲み会をそこそこに朝風呂をキメていた時だった。

 友人が鬼怒川の朝空を見上げ、ふうとため息一つ付き、

 

 XBOX360……やりてえなぁ……運転が……してぇ……」

 

 とつぶやいた。何年も何年も同じゲームをプレイ。そして友人と旅の朝風呂に浸っている時ですら、友人の心はXBOXLIVEにいるのだ。

 まるでドラマのワンシーンのようなロケーション。完璧な表情だったのに、セリフは猛烈に残念だった。インサイドXBOXを友人ではなく、森一丁にしたのはビル・ゲイツのミスキャストといわざるを得ないだろう。

 

 君に必要なのはレンタカーを借用しての実車教習だよ。

 

 とも思ったわけだが、私は彼がそこまで入れ込むXBOX360に興味がわき、強く惹かれていった。

 

 こうなってからは早く、私もXBOX360をすぐに購入し、ロスルEを購入した。

 

 「友人よ。私もとうとう購入した。今日一緒にハワイを流さないか?先導してくれ」

 ゼミの授業中に彼に告げると、彼はすこし驚いた顔をした後に、すぐに微笑み、

 

 「まかせてくれよ」

 

 といった。

 

 

 

 大学も終わり、タグを打ち込み、友人とボイスチャットをつなげる。

 ボイスチャットごしにきく初めての友人の声は、活舌が悪く、まったく聞きづらい声をしていた。

 

 「どこにいきたい?」

 

 おもむろに友人が言う。

 

 「えっ?」

 

 どこに行きたい?は予想外だった。もう入り込み方が違う。あいつの心はもうハワイにいるのだ。私は自分の気持ちの作り方に不備があったことを恥じる。

 

 「よくわからんから面白い場所につれていってくれよ」

 「ん。わかった」

 

 本当にわかっているのか?

 

 一抹の不安を抱えながら、ドライブはスタートした。

 ハワイを緻密に再現されているというロスルE。景色もきれいで楽しめるのだが、私はハワイにいったことがなかった。これがどう緻密なのか全く判別がつかない。

 

 「これ、オアフ島に本当に似てるのか?」

 

「知らん。俺も行ったことない」

 

 こんなにやりこんでいるのに、お前も知らないのかとは言えなかった。

 

 

 最初はただ感動していたが、問題が発生する。

 友人は私をハワイの出雲大社に誘導しているようだったが、とにかく遠いのだ。

 このゲームハワイの縮尺も再現しているらしく、

 

 出雲大社までは1時間30分もかかるのだ。

 

 そして友人はゲームに浸りきっているわけで

 

 終始無言である。

 

 

 これならば、ファミコンエキサイトバイクをプレイしているほうがまだエキサイトできるのではないかという疑問が脳裏に浮かぶが、そこはぐっとこらえる。

 

 そしてドライブを終え、ついた出雲大社は想像以上にちいさく。

 

 アッ。ハイ

 

 という感じだった。

 

 

 友人は私を先導した満足感からか、「それじゃあ」と言い残し、落ちていった。

 

 

 ロスルEを起動することは二度となかったが、XBOX360は本当にいい電脳遊戯機であり、なんというか本当に狂人が多かった。そんなエピソードにことかかかないハードであった。

 そういう意味では本当にいいハードだった。

 

 XBOXの話はまた後日しようと思う。まだまだ語りたいことがたくさんあるのだ。